市街地・雨水浸透系

雨を地下にしみこませ、豊かな湧水を復活させたい!

背景:湧水(地下水)量の減少

印旛沼流域には今でも各所で湧水が残っていますが、過去に比べるとその量は減少してきています。下の図は、印旛沼流域の土地利用の変化を示しており、かつてと比べると不浸透面(宅地、市街地、道路)の占める面積が約4倍に増加しています。
過去:7.8%  ⇒ 現在:27.2%
これによって、雨水が地下に浸透しにくくなり、湧水が減っているのです。また、表面流出※が増加し、道路冠水や住宅の浸水等の水害が発生し易い状況になっていることを示しています。
市街化は今後もより一層進む事が想定されるため、市街地対策の重要性は高まってきていると言えます。

図1 土地利用の変化
土地利用の変化

※表面流出:雨水などが地下浸透せずに地表面を流れる水の流れ
 

目的

市街地対策の重要性を受け、みためし行動市街地・雨水浸透系では、下記を目標に取り組みを実施しています。
A:浸透対策実施による湧水量の増加・復活
B:市街地面源負荷削減対策の実施・検討
B-1:市街地からの降雨時負荷流出特性の把握
B-2:面源負荷対策の実施(雨水調整池の改良)
 

経緯

印旛沼流域内の加賀清水公園(佐倉市)は、湧水でできた池があり、緑にも囲まれて、地域の方々とのオアシスとなっています。この湧水は、江戸時代、佐倉城の城主・大久保加賀守忠朝が好んで飲んでいたことから“加賀清水”と言われているように、昔から人々に愛されています。ところが近年、この湧水が減ってきており、特に雨が降らない日が続くと、池がかれてしまうという事態が起こっています。
かつて、加賀清水の周辺の土地は、畑や緑に囲まれており、湧水の元となる雨水をしっかり地下に涵養していましたが、住宅が建ち並び、地面がコンクリートやアスファルトに覆われてきたため、雨水が地下にしみこみにくくなってしまったのです。
そこで市街地・雨水浸透系のモデル地域にこの加賀清水を指定し、地域の方々にご協力をいただきながら、雨水を地下に浸透させるなどの取り組みを実施しています。
取り組みは、平成16年より始まり、ワーキングを開催しながら各種取り組みを実施してきています。
<モデル地域:加賀清水>

加賀清水の四季 春
 
加賀清水の四季 夏
 
加賀清水の四季 秋
 
加賀清水の四季 冬
 
加賀清水湧水の枯渇状況 通常時
 
加賀清水湧水の枯渇状況 枯渇時
加賀清水湧水の枯渇状況 (左:通常時、右:枯渇時(2000年冬))

場所(地域名、住所、地図)

 

より大きな地図で みためし行動 市街地・雨水浸透系 を表示

 

取り組み内容

A)加賀清水湧水の復活(浸透対策の実施とその効果把握)
 加賀清水湧水の涵養域に浸透対策(雨水浸透マスの設置や透水性舗装)を実施し、浸透対策により加賀清水湧水の湧水量、湧水水質がどのように変化をするのかを把握する。また、将来まで加賀清水を保全していくため、市民と協働した湧水池の保全活動を実施する。

具体的なメニュー
・浸透対策(雨水浸透マスの設置、透水性舗装・浸透トレンチの整備)
・モニタリング(降雨量、湧水量、湧水池水質、雨水浸透マスの浸透機能など)
・加賀清水だより(地域への啓発チラシ)の作成・配布
・加賀清水座談会の開催
 

B)市街地からの面源負荷削減対策の実施
 効果的な面源負荷削減対策を検討するため、降雨時負荷流出特性(特にファーストフラッシュ現象)を解明し、その特性に合わせた効果的な対策の検討を行う。
面源負荷削減対策の一つとして、本来治水目的で建設されている雨水調整池に簡易な改良を施し、降雨初期の濁水の滞留時間を増加させ、調整池が元々保有している面源負荷削減効果を増加させる。

具体的なメニュー
・調整池の改良
・モニタリング(調整池流入量、流出量、流入水質、流出水質、調整池内水位、堆積土砂量)
 

成果

取り組みより以下のような成果が得られました。
成果の詳細は各項目をクリックして下さい。

取り組みAの成果
加賀清水湧水の湧水量増加(浸透対策の実施とその効果把握)
雨水浸透マス機能維持のための定期的メンテナンスの必要性
市民と協働した加賀清水湧水の保全活動の実施 

取り組みBの成果
市街地の降雨時流出特性、浸透対策による効果の確認
雨水調整池の改良による、面源負荷抑制効果の増大

 

最後に・・・

みためし行動により得られた成果を流域に展開することが今後の取り組みです。 
浸透対策(雨水浸透マス設置等)は、地下に浸透する雨水の量を増加させ、地下水や湧水を豊富にします。それは、印旛沼の水循環を健全にするだけでなく、洪水対策にも効果があることも分かりました。
今後は、より流域住民皆さまのご協力をいただき、浸透対策を普及していくための取り組みを実施していきます。
また、調整池の改良も市街地からの面源負荷対策としての有効性が確認されており、管理者(主に市町村)と協議を行い、普及して行きます。
 

加賀清水湧水の湧水量増加(浸透対策の実施とその効果把握)

・枯渇日数が減少しました。(図2)
浸透マスの設置基数と湧水量の枯渇日数を整理した結果、浸透マス設置基数の増加に伴い、枯渇日数が減少しました。

・同じ降雨量(API30)時の湧水量が増加しました。(図3)
通年(年度)では顕著な変化は見られませんが、降雨量が少なく一般的に湧水量が減少する冬季(12、翌1月)では、湧水量が増加しました。冬季(12、翌1月)の降雨量(API30)と湧水量の関係を平成17年度と平成20年度で比較すると、降雨量に対し湧出する湧水量が増加しています。

図2 浸透対策による効果 枯渇日数の減少

 

浸透対策による効果 枯渇日数の減少
※枯渇日数は、湧水量の日平均がゼロの日数と定義して整理した。


図3 浸透対策による効果 湧水量の増加
浸透対策による効果 湧水量の増加

※API:先行降雨指数
30日降雨を考慮したAPI(先行降雨指標)の値
API(先行降雨指標):APIの値が大きいと先行降雨の影響が大きく、小さいと先行降雨の影響が小さいことを示す指標
API30:30日前までの降雨を考慮した先行降雨指数

 

雨水浸透マス機能維持のための定期的メンテナンスの必要性

【雨水浸透マスのメンテナンス】
・雨水浸透マスの効果を維持するには定期的なメンテナンスが必要
雨水浸透マスを設置することで様々な効果があることがわかりましたが、一部の雨水浸透マスでは雨水が浸透せず、あふれているものも見られます。
そこで、平成19年度に、集水マス内の雨水浸透マス174基(全設置数の約8割)の堆積状況、浸透状況の調査を実施しました。
設置後間もない雨水浸透マスについては、泥などの堆積物はほとんどたなく、雨水がきちんと浸透することがわかりました。
一方、設置後6年以上経っている雨水浸透マスは、堆積物が多くたまり、浸透しにくくなっていて、中には全く浸透しないものもありました。
 

 


ポリプロピレン(底部浸透)型 (設置後、約1~2年経過

ポリプロピレン(底部浸透)型 全ての浸透マスで堆積物はほとんどない。
・全ての浸透マスで浸透機能は維持されていた。
 
穴あきの蓋
穴あきの蓋
  ↓
ポーラスコンクリート(底部側部浸透)型 (設置後、約6~10年経過)
 
ポーラスコンクリート(底部側部浸透)型 ・砂・泥の堆積が多い浸透マスでは徐々にしか浸透しないものが多かった。
・堆積物除去前後で浸透スピードはほとんど変わらなかった。
・堆積がほとんどない浸透マスでは浸透したが、浸透スピードは、他のタイプより遅かった。
 
堆積物が多かった
堆積物が多かった


雨水浸透マスのタイプにより傾向は異なっていましたが、浸透機能を持続させるには、定期的な維持管理が重要であることが確認されました。
今後、雨水浸透マスの定期的メンテナンスを推進していくとともに、浸透状況の悪い雨水浸透マスについては、清掃や取り替えなどを検討していく予定です。
 

市民と協働した加賀清水湧水の保全活動の実施

 【加賀清水座談会】
モデル地域の方々との意見交換の場として、加賀清水座談会を開催しています。
加賀清水座談会は、地域の方々と専門家や行政(千葉県、佐倉市職員)がざっくばらんに話し合い、これから加賀清水をどうしたいのか、どうするべきなのかを具体的に考えています。
座談会は、これまで3回実施して、今後も必要に応じて継続していく予定です。
加賀清水座談会

第1回加賀清水座談会での主な意見
■日時:平成20年12月14日(日)
■場所:加賀清水青年会館
■参加人数:21名(地域の方々10名、行政関係者11名)
■主な意見
・わき水は活用しないと保全につながらない。
(わき水がわいている場所を明示する、わき水を汲んでお茶をたてる ・・・など)
・水のある生活、きれいな水のある地域は、子どもたちだけでなく大人にもいい影響を与える。
・月1回実施している公園清掃を、地域のコミュニケーションの場にしたい。
・地域の人に水循環のシステムや雨水浸透マスの仕組み・効果を理解してもらうことが重要。
・池にたまっているヘドロを除去してほしい。

第2回加賀清水座談会での主な意見
■日時:平成21年4月29日(水・祝)
■場所:加賀清水青年会館
■参加人数:26名(地域の方々14名、行政関係者12名)
■主な意見
・池の底にたまっている泥の除去を、自分たちでやってみよう。
・雨水浸透マスの普及は、行政でやるのではなく、自治会の中で広めていかなければだめ。
・雨水浸透マスは、自分の家に効果がなくても、浸水被害に困っている同じ町内の人のためになる、ということを認識する。
・湧水を復活させたことで有名な国分寺市へ見学に行ってはどうか。
※本座談会後、住民の方々と協働して“池底のたまった泥の除去(池さらい)”を実施しました。その様子はこちら


第3回加賀清水座談会での主な意見
■日時:平成21年12月6日(日)
■場所:加賀清水青年会館
■参加人数:21名(地域の方々7名、行政関係者13名)
■主な意見
・泥や落ち葉の清掃については、今後も課題として残るものである。継続可能な清掃方法を考えるべきである。
・「雨水浸透マス」の機能まで、しっかりと理解している住民は少ないのではないか。
・取り組みを知ってもらうためには自治会の回覧だけでは無理だと思う。近所同士の口コミが一番良いのではないか。
・加賀清水を守るために、雨水浸透マスの設置や清掃について、地域が主体となって取り組むになるのは当たり前だと思う。でも、実際には難しい。
・住民の人たちが主人公となることが大切である。

 

 【加賀清水の池さらい】
第2回の座談会において、「池の底に溜まっている泥の除去を自分たちでやってみよう」という意見を受けて、“加賀清水の池さらい”を実施しました。市民と協働して加賀清水湧水に溜まった泥をとり、湧水が湧く様子をもっと実感できるように湧水口の改良を行いました。取り組みの内容はケーブルテレビで取り上げられ、千葉県インターネット放送局で公開されています。
日時:平成21年5月31日(日)10時~16時
目的:湧水池の水質改善、湧水の湧出箇所の確認
作業内容:上流部の池底にたまっている泥の除去
湧水が湧いている様子が分かるようなしかけづくり
加賀清水の池さらい

池さらいの様子がケーブルテレビで放送されました。映像は、映像は、コチラから見ることができます。(佐倉市提供)
千葉県インターネット放送局
 

【加賀清水だより】
地域の方々に、加賀清水のことや、加賀清水で行われている取り組みのことを知っていただくため、地域の広報誌「加賀清水だより」を作成・配布しています。
各号の内容は下記の通り。
クリックするとPDFファイルのダウンロードが可能です。
 

加賀清水だより 内容
第7号(PDF:256KB)
平成21年11月発行
・第3 回 加賀清水座談会 を開催します!!
第6号(PDF:1230KB)
平成21年11月発行
・雨水浸透マス設置キャンペーン
第5号(PDF:464KB)
平成21年6月発行
・加賀清水の池さらいを実施しました!!
第4号(PDF:415KB)
平成21年4月発行
・印旛沼再生行動大会で、加賀清水での取り組みをPR しました!!
・第1 回 加賀清水座談会を行いました!!
・第2 回 加賀清水座談会を開催します!!
・いんば里山歩き隊・隊員募集!
第3号(PDF:2,151KB)
平成21年2月発行
・印旛沼再生行動大会
・印旛沼環境フェア
第2号(PDF:385KB)
平成20年12月発行
・加賀清水のまわりで、神社を3 つも発見
・伝統的な行事やお祭りなどがいっぱい
・雨水浸透マスを清掃しました
・加賀清水への想いを聴かせてください
創刊号(PDF:742KB)
平成19年12月発行
・加賀清水ってどんなとこ?
・なぜ、わき水が涸れてしまうの?
・雨水浸透マスってなんだろう?
・雨水浸透マスの設置状況
・わき水みまもり隊の隊員募集!!

 

市街地の降雨時流出特性、浸透対策による効果の確認

 【ファーストフラッシュ特性の把握】
市街地において、降雨の初期に汚濁濃度が高くなる現象をファーストフラッシュ現象といいます。ファーストフラッシュ現象は、市街化されることにより、地面が被覆されることで降った雨が地面にしみこみにくくなることでホコリやチリ、ゴミがたまり、それが雨でフラッシュすることで発生しています。
加賀清水地域も市街化が進んでいる地域であり、下図(左)に示すようにファーストフラッシュ現象が確認されました。ファーストフラッシュ現象の強弱については、先行降雨の影響が小さい(APIが小さい)ほど顕著になり、先行降雨の影響が残っている(APIが高い)と流量と濃度のピークはほぼ同じになる(下図(右)ことがわかりました。


図4 ファーストフラッシュ現象
ファーストフラッシュ現象ファーストフラッシュ現象2

【浸透対策による流出抑制効果の増加】
図5は、浸透対策を実施している地域(排水路流域)。浸透対策を実施していない地域(調整池流域)における流出高※7を比較した図です。浸透対策を実施している地域(排水路流域)と浸透対策を実施していない地域(調整池流域)における土地利用状況(不浸透面の面積)は同じような状況になっています(図6参照)が、浸透対策ありの排水路流域の方が、同じ降雨量に対して流出高が小さくなっていることがわかります。これは降った雨が地表面を流れる水量が減少し、地下に浸透する量が増加していることを示しており、浸透対策(浸透マス、浸透性側溝等)により降雨時の流出が抑制される(治水効果=都市によるダム)ことを示しています。

図5 浸透対策による流出抑制効果
浸透対策による流出抑制効果

 

 浸透対策実施状況

■土地利用

図6 調査実施流域
調査実施流域
 

 

※7:流出高(mm):降雨時の流出量(m3)/ 集水面積(m2)
 

雨水調整池の改良による、面源負荷抑制効果の増大

 
【加賀清水調整池での改良】
はじめに加賀清水調整池で改良を実施し、その効果の確認を行いました。改良は、下図に示すような魚の骨のようなかごマット(高さ30cm)を敷設することで実施しました。

◆改良のポイント
・安価な工事
・ファーストフラッシュに着目
※高さを低くし、調整池の治水容量には影響を与えないようにした。
結果、土砂・窒素・リンの堆砂速度の増加が確認され、調整池の改良が面源からの負荷削減に効果があることが分かりました。

 

<改良前>
 
<改良後>

 調整池の改良改良前後

 

改良前 改良後

 

堆砂速度  [t/km2/year]

41.9 81.0

約1.9倍

窒素堆積速度[kg/km2/year]

1.7 5.1

約3.0倍

リン堆積速度[kg/km2/year]

1.0 2.1

約2.1倍

 ※2008(H20)年度における調査結果

調整池の様子

 

【他調整池での改良】
加賀清水調整池において改良の効果を確認したため、同様の改良が他調整池でも効果を発揮するのかを確認するため、流域にある以下の3つの調整池でも改良を実施しました。
・次郎丸第1調整池
・次郎丸第2調整池
・城大栗調整池
その結果、次郎丸第1、第2調整池においても同様の効果を確認することができました。城大栗調整池についても今後効果の確認を行っていきます。
 

◆各調整池での改良状況
改良を実施した4つの調整池の改良状況を下記に示します。
調整池の規模や流入・流出口の配置のことなるタイプの調整池で実施しました。
各調整池での改良状況


◆改良の効果
改良によって、流入口付近の囲みの中での堆砂速度が高くなりました。また、囲み以外の箇所も改良前に比べると堆砂速度が高く、改良によって、流入口付近だけでなく、調整池全体の堆砂速度が高くなりました。
なお、城大栗調整池は、改良の実施が次郎丸第1、2調整池よりも遅く実施しており、まだ、改良前の調査のみしか実施していません。今後調査を実施していく予定です。
 

 次郎丸第1調整池
次郎丸第1調整池

 
次郎丸第2調整池
次郎丸第2調整池


城大栗調整池
城大栗調整池

◆堆砂速度の変化
下表に、各調整池の土砂・窒素(N)・リン(P)の堆砂速度の変化を整理しました。
改良によって、土砂は2~4倍、窒素は3~7倍、リンは、2~8倍と堆砂速度が高くなりました。次郎丸第1、2調整池のように規模の小さな調整池では、より改良の効果が顕著に現れ、流入口のみで改良前と同等以上の堆砂速度となりました。

表1 各調整池の堆砂速度の変化

  次郎丸第1 次郎丸第2 加賀清水
流入口 全体 流入口 全体 流入口 全体
堆砂速度 1.15 3.58 0.70 4.48 0.33 1.78
N堆積速度 2.31 7.21 1.07 7.79 0.23 2.96
P堆積速度 3.66 8.79 1.18 7.77 0.33 2.10

※改良後(流入口or全体)の堆砂速度/改良前(全体)

なお、本結果は、東京理科大学理工学部二瓶准教授と協同により実施した調査結果です。

 

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