よみがえれ!いんばぬまの水草

水草を復活させたい!


※本取り組みでは、沈水植物・浮葉植物を中心とした水生植物群落を“水草”と称しています。

背景・目的<なぜ水草を再生させるのか?

A過去と現在の植生

 かつての印旛沼には、多くの水草が生えていましたが、現在はその姿をほとんど見ることができなくなってしまいました。
(下図参照)

 水草は、水質浄化や生き物のすみかを提供するなどの様々な役割を果たしており、この水草の減少が印旛沼の水質が改善しない一つの要因であると考えられています。

 

印旛沼の水質

図  印旛沼の水質と水生植物数の変化

 

B水際のエコトーンの変化
下記の写真は、水草が豊富に繁茂していた当時と現在の航空写真です。築堤などによって、水際のエコトーンが減少し、水草群落が減少した様子がわかります。

 

図 かつてと現在の水際植生

 

※水際のエコトーンとは、水中と陸をつなぐ「エコトーン(移行帯)」のこと。

湿地性植物から抽水、浮葉、沈水、浮遊植物というように、水辺の環境に合わせた植物により構成された空間

エコトーン

図  水際のエコトーン(イメージ)
 

水草再生の基本的考え方

 すでに消失してしまった水草をどうやって再生するのか、その基本的な考え方は“埋土種子(シードバンク)”の活用です。
多くの植物の種子には休眠性があり、土の中で長い間生存し、発芽のチャンスを待つ事ができます。そのため、印旛沼の沼底や干拓により埋め立てられた箇所には、今も水草の種が眠っている可能性が高いとの仮説をたて、植生再生実験を行い、その仮説の検証を行いました。

 本取り組みでは、この埋土種子を最大限活用し、他の地域から水草を移植するのではなく、印旛沼の遺伝子を持つ水草の再生を行っています。

 
水草再生の考え方

図 水草再生の考え方

取り組み内容

 水草の再生に向けた主な取り組みは2つです。
・植生再生実験
・植生帯整備

 植生再生実験において、印旛沼の埋土種子から水草の再生は可能なのか、そのために必要な条件はなにかを検証し、その成果を活用して、水草が生育できる植生帯整備を行うという取り組みを実施しています。

 また、植生帯整備にはたくさんの水草の苗が必要なことから、植生再生実験で再生に成功した水草や流域に現存する水草から苗を生育しています。

水草再生フロー
図 水草再生に向けたフロー


 

成果(メニューごと)

<植生再生実験>

 漁業協同組合から借地している実験池や植生帯整備箇所などで、かつて印旛沼に生えていた水草を散布体バンクから再生することに成功しました。現在23種(下表)の水草を未来に残すために千葉県立中央博物館の協力を得て保存しています。また、水草の再生に必要と思われるいくつかの条件や水草による効果もわかってきました。


表 保存している水草の種類

上位分類群 科名 学名 和名 指定状況
環境省RDL RDL千葉
合弁花類 ミツガシワ Nymphoides peltata アサザ NT B
合弁花類 ミツガシワ Nymphoides indica ガガブタ NT C
単子葉類 イバラモ Najas marina イバラモ   A
単子葉類 イバラモ Najas oguraensis オオトリゲモ   B
単子葉類 イバラモ Najas ancistocarpa ムサシモ CR B
単子葉類 トチカガミ Hydrilla verticillata クロモ   C
単子葉類 トチカガミ Vallisneria denseserrulata コウガイモ   B
単子葉類 トチカガミ Vallisneria asiatica セキショウモ   C
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton pusillus イトモ NT B
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton x inbaensis インバモ   B
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton crispus エビモ    
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton dentatus ガシャモク CR B
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton malaianus ササバモ   D
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton maackianus センニンモ   X
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton panormitanus ツツイトモ VU A
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton distinctus ヒルムシロ    
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton perfoliatus ヒロハノエビモ   X
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton pectinatus リュウノヒゲモ   B
単子葉類 ヒルムシロ Potamogeton anguillanus オオササエビモ   X
離弁花類 アリノトウグサ Myriophyllum spicatum ホザキノフサモ    
離弁花類 スイレン Brasenia schreberi ジュンサイ   A
緑藻植物門
/車軸藻綱
/シャジクモ目
シャジクモ Chara spp. シャジクモ属 VU  
緑藻植物門
/車軸藻綱
/シャジクモ目
シャジクモ Nitella spp. フラスコモ属    

出典:
環境省RDL:哺乳類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、植物Ⅰ及び植物Ⅱのレッドリストの見直しについて(環境省 平成19年8月3日)
絶滅危惧ⅠA類(CR)、絶滅危惧Ⅱ類(VU)、準絶滅危惧(NT)
RDL千葉:千葉県の保護上重要な野生生物 千葉県レッドリスト<2004年改訂版>
消息不明・絶滅生物(X)、最重要保護生物(A)、重要保護生物(B)、要保護生物(C)、一般保護生物(D)
 

出典:日本のレッドデータ検索システム(http://www.jpnrdb.com/index.html
 

フラスコモ属 シャジクモ属 ササバモ
フラスコモ属 シャジクモ属 ササバモ
セキショウモ エビモ アサザ
セキショウモ エビモ アサザ
ガガブタ ガシャモク コウガイモ
ガガブタ ガシャモク コウガイモ

 

<植生帯整備>

 植生帯整備は平成19年度に北須賀工区から整備を開始し、現在5地点の整備が終了しています(下図)。植生帯整備は、今後も継続して実施していく予定です。

 
注)北須賀の一部と大竹工区は北千葉道路・成田新高速鉄道のヨシ原再生事業によって整備されている箇所です。詳細はこちら。(北千葉道路建設事務所)


より大きな地図で 植生帯整備箇所 を表示

図 植生帯整備箇所図


◆北須賀工区(北千葉道路・成田新高速鉄道のヨシ原再生事業と協働整備)
・緩傾斜湖岸法による整備箇所です。
・現在のところ沈水植物は再生していませんが、カワジシャ等湿地性希少植物、ヨシやガマなどが繁茂するなど良好な湿地環境となっています。

2010年4月14日撮影 2010年4月14日撮影
2010年4月14日撮影 2010年4月14日撮影
2010年6月1日撮影 2010年6月1日撮影
2010年6月1日撮影 2010年6月1日撮影

 

整備工法:緩傾斜湖岸法

高水敷の前面に盛土をして緩い傾斜の湖岸を造成し、水際のエコトーンを創出することで水草を再生させる工法

整備工法

※エコトーンの説明はこちら


◆八代1工区
・囲い込み水位低下法による整備箇所です。
・ほぼ同じ広さの2つのエリアに分割して整備を行っています。それぞれのエリアで水草の再生に成功しています。

<エリアA> 2009年8月19日撮影 <エリアB> 2009年8月19日撮影
<エリアA> 2009年8月19日撮影 <エリアB> 2009年8月19日撮影
エリアAで再生した水草 エリアBで再生した水草
エリアAで再生した水草 エリアBで再生した水草

 

整備工法:囲み込み水位低下法

止水矢板等で隔離水界を設け、ポンプ排水にて隔離水界内の水位を下げることで沼底に届く光の量を増やすことで水草を再生させる工法
※将来的には、止水矢板等は撤去する

 

◆八代2工区
・沈水植物の種子を多く含む土砂を撒きだした整備箇所です。
・波を和らげる施設を整備するだけの簡易な整備方法で水草の再生を行っている箇所です。
・アメリカザリガニなどからの食害を防止した区画内で水草の再生に成功しています。

2009年4月16日撮影 2009年4月16日撮影
2009年4月16日撮影 2009年4月16日撮影


整備工法:浅瀬に沈水植物の種子を多く含む土砂を撒きだし水草を再生させる工法

整備工法


◆甚兵衛大橋工区
・水たまり法による整備箇所です。
・ササバモやアサザなどを中心として、豊富な水草の再生に成功しています。

2010年6月1日撮影 再生した水草
2010年6月1日撮影 再生した水草
再生した水草 再生した水草
再生した水草 再生した水草


整備工法:水たまり法
高水敷を掘削して、水たまり状の池を創出し水草を再生させる工法

 


◆大竹工区(北千葉道路・成田新高速鉄道の代替措置事業)
・北千葉道路・成田新高速鉄道の代替措置事業として整備されているヨシ原内にある、3つの池で様々な種類の水草が多数生育しています。

2010年6月1日撮影 2010年6月1日撮影
2010年6月1日撮影 2010年6月1日撮影
再生した水草 再生した水草
再生した水草 再生した水草

 

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