印旛沼流域は、台地(下総台地) とこれを浸食している谷津と呼ばれている谷底低地、及び谷津に面した斜面や崖から構成されています。台地は保水性・透水性の優れた関東ロームと呼ばれる土層で覆われ、台地や斜面に降った雨は、地表水として流下し、または地下へ浸透して、湧水となって印旛沼に流入します。さらに、上位の帯水層から下位の帯水層(下総層群) へと浸透する流れも存在しており、この水もいずれは印旛沼へ流入します。印旛沼流域では、このような地形を背景に、谷津頭や斜面からの豊富な湧水が湧出して、流域の自然環境や人の暮らしの基本的な要素となっています。

谷津は、台地に枝状に入り組んだ地形で、印旛沼流域特有の地形です。崖は斜面林に覆われ、多くの湧水が湧き、印旛沼の水源となっています。

台地に枝状に入り組んだ谷津(高崎川)と流域の湧水
印旛沼は、印旛沼開発事業(1969 (昭和44) 年竣工) によって、6,500ha もの水田が造成されるとともに貯水池化され、水管理されています。そして、千葉市や浦安市等に水道用水、京葉工業地帯等に工業用水、印旛沼周辺水田に農業用水がそれぞれ供給されています。印旛沼・利根川から取水している柏井浄水場では9 市1 町、長門川から取水している前新田浄水場では1 町1 村に給水しています。


印旛沼の水利用(2004~2008年の平均)と、かつて(開発前)と今の印旛沼のかたち

千葉県水道用水の給水区域
印旛沼及び流域は、都心から約40km に位置しながら、今なお豊かな自然環境が残っています。
湧水が湧出する谷津等では、生き物たちが多数生息・生育しています。
千葉県は、全国有数の農業県です。沼周辺は水田、流域の台地には畑が広がっています。
印旛沼は漁業資源も豊富です。張り網(コイ、フナ、雑魚等) や船曳網(エビ、ワカサギ、雑魚等)、柴漬(エビ、ウナギ、雑魚等) 等の漁業が、現在でも行われています。また、沼周辺は、多くの釣りの姿も見られます。
古代、印旛沼周辺は“古鬼怒湾(香取海または香取浦)” の入り江であったことから、古くから人々が生活を営んできました。その長い暮らしの歴史の中で、地域の祭祀や信仰のための社寺仏閣が創建され、地域の文化がはぐくまれてきました。
印旛沼周辺の神社を見ると、麻賀多神社、宗像神社、鳥見神社、埴生神社が多く、それぞれが交わることなく分布し、沼の周辺に定着した人々の起源や、沼周辺の地域構成や文化形成の重要な手がかりを掴むことができます。
また、印西市にある結縁寺には、国の重要文化財である銅造不動明王が安置されています。そして、この周辺の谷津地域は、自然環境、生物多様性、人の営みの視点で優れた里として、「にほんの里100 選」(朝日新聞社・( 財) 森林文化協会主催、2009 年1月)に選ばれました。
西印旛沼の鹿島川河口付近には佐倉ふるさと広場があり、季節に応じて色々なイベントが開催されています。また、沼の周囲はサイクリングロードが整備され、週末には多くの人々が訪れます。屋形船も運航され、水上から印旛沼や沼周辺の自然を楽しむことができます。